和歌と俳句

春寒 春寒し

池田より炭くれし春の寒さ哉 蕪村

いかづちの後にも春のさむさ哉 召波

はる寒し風の笹山ひるがへり 暁台

春寒し泊瀬の廊下の足のうら 太祇

春寒し水田の上の根なし草 碧梧桐

春寒き寒暖計や水仙花 子規

汐落ちて貝掘りそむる春寒き 碧梧桐

春寒き火鉢によるや歌語り 虚子

鉄幹
いとし児に乳は足らへりや春寒のながき年なりきぬまゐらする

鉄幹
春寒の身にしむ夜やと裏の木戸そとあけませる叔母君のなさけ

春寒や生姜湯かぶる風邪籠 亞浪

春寒の社頭に鶴を夢みけり 漱石

春寒や掘り出されたる蟇 鬼城

山寺に蒟蒻売りや春寒し 鬼城

春寒や砂より出でし松の幹 虚子

晶子
春寒し大木の上のうす雲の襟の中までおつる心地に

千樫
藪かげゆ小舟にのりて水たぎつ鬼怒川わたりぬ春の寒きに

春寒く咳入る人形遣かな 水巴

裏山の竹伐る音や春寒し 龍之介

春寒や竹の中なる銀閣寺 龍之介

新道は石ころばかり春寒き 龍之介

春寒の 帯をかんだに 結びけり 万太郎

葱掘つて土ぼそぼそと春寒き 亞浪

春寒やのび損ねたる日陰独活 龍之介

春寒し楼門聳ゆ藪の奥 泊雲

春寒き障子あけたてして静か 花蓑

春寒し物故の人に詫び心 花蓑

春寒や脱ぎつ重ねつ旅衣 虚子

春寒う机かすめて日の消えし 亞浪

投入に葱こそよけれ春寒き 水巴

春寒や埃をかぶる庭の雪 普羅

春寒し人熊笹の中を行く 普羅

春寒やお蝋流るる苔の上 茅舎

春寒やお滝様とて竹の奥 茅舎

春寒のよりそひ行けば人目あり 虚子

八一
みよしののむだのかはべのあゆすしのしほくちひびくはるのさむきに

春寒をかこちあひつゝ句会かな 石鼎

春寒や道ほそぼそと阿弥陀堂 青畝

春寒し水取のあと二日ほど 青畝

春寒や二つ連れだつホ句の霊 月二郎