からかさやでで虫の垣すれ出づる
玉垣や花にもまさるべに若葉
吹きまろぶ病葉あそぶ檜皮屋根
朝寒や擂鉢ふせし木の間の木
天の川見えずなりたる夜長かな
落し水跣の下にきこえけり
秋晴やうしろ見せたる峰社
宵も早籬陰りけり十三夜
星のとぶもの音もなし芋の上
やどり木もとりつき騒ぐ野分かな
野分吹く水をはねたり蓼の上
秋の谷とうんと銃の谺かな
鴫一つ向ふさがりや沼の小田
鶺鴒の吹分れても遠からず
鶺鴒や羽づくろう腋しらしらと
一本の塀きんかんの数しらず
古坪や赤鬼灯のよこたはる
お命講かかはりなしや余所の寺
炉話の鼻をくすぐる嚏かな
侘助のはしり賢し壺の如
たふやかに年寄耳や宝舟
傀儡の頭がくりと一休
春寒や道ほそぼそと阿弥陀堂
春寒し水取のあと二日ほど
すぐ乾くあくび泪や壬生念仏
お甘茶や一人貌なる疲れ尼
風吹いて又ちろちろと畦火かな
簀の中に蝶をなぶりて茶摘かな
雛壇や閏遅れに百姓家
白酒やなでてぬぐひし注零し