にぎはしき雪解雫の伽藍かな
さわさわと水輪やまずよ代蛙
穴出でむ蟲のほのめきあきらかに
つぶつぶと蕾むゆかしさ枝垂梅
ちらちらと老木 桜のふぶきかな
花の雲かくれつ見えつ行手かな
吹降りに当たりたる日やさわぐ藤
垂れし藤杉に美し詣でけり
涼しさや払子さはらぎなびかして
樹にとまりすずしき鴛鴦の水かがみ
はしる鮠こごみ見るなり泉殿
滝道や小つくろひしてたのもしき
塵取るや又つながりし蟻の道
かげぼふしこもりゐるなりうすら繭
のけぞりに空蝉すがる青柚かな
やまびこの消えてさびしき鳴子かな
月魄のすでにかしこし秋の空
月の道折りかへさむと友の影
逍遥す昼といふべき月の道
大阪やけぶりの上にいわし雲
日あたりてけぶりそむなり露葎
しろじろと蔽ひて広し露葎
ちはやぶる神垣見えて秋の山
がちやがちやの鳴きさざめかす葎かな
蟷螂の吹かれしがみや萩の上
桐一葉さはりきし葉や揺れ合へり
色づきや秋海棠の茎の節
露の蟻瓢の肩をのぼりけり
南瓜とつて何を播かまく孀かな