和歌と俳句

阿波野青畝

万両

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

にぎはしき雪解雫の伽藍かな

さわさわと水輪やまずよ代蛙

穴出でむ蟲のほのめきあきらかに

つぶつぶと蕾むゆかしさ枝垂梅

ちらちらと老木 のふぶきかな

花の雲かくれつ見えつ行手かな

吹降りに当たりたる日やさわぐ

垂れし杉に美し詣でけり

涼しさや払子さはらぎなびかして

樹にとまりすずしき鴛鴦の水かがみ

はしる鮠こごみ見るなり泉殿

滝道や小つくろひしてたのもしき

塵取るや又つながりし蟻の道

かげぼふしこもりゐるなりうすら繭

のけぞりに空蝉すがる青柚かな

やまびこの消えてさびしき鳴子かな

月魄のすでにかしこし秋の空

の道折りかへさむと友の影

逍遥す昼といふべきの道

大阪やけぶりの上にいわし雲

日あたりてけぶりそむなり

しろじろと蔽ひて広し露葎

ちはやぶる神垣見えて秋の山

がちやがちやの鳴きさざめかす葎かな

蟷螂の吹かれしがみや萩の上

桐一葉さはりきし葉や揺れ合へり

色づきや秋海棠の茎の節

の蟻瓢の肩をのぼりけり

南瓜とつて何を播かまく孀かな