椎の花餅を搗く蚊のこぼしけり
谷風や花百合そ向きま向きして
隠栖む人の替へたる障子かな
案山子翁あち見こち見や芋嵐
十五夜のこそつく風や烏瓜
木がくれて望のいざよふけしきかな
遠めいて無月の灯あり寺なれや
寝待月縁ちかければゐざり出る
白露に顔たてのぞく鼬かな
法師蝉耳に離れし夕餉かな
軒煙さらひさらひて寒さかな
いみじくもかがやく柚子や神の留守
目をしかむしぼり泪や炉火の酔
おほづれに寒念仏の優婆夷かな
冬川や藁塚出来て映りあふ
凍鶴が羽ひろげたるめでたさよ
笹鳴の人なつかしや忌がかり
笹啼やまかげしたまふ矢大臣
神主の家の飾の寒さかな
お水屋やはさらほさらと風飾
なつかしの濁世の雨や涅槃像
畦焼のいぶりまとはる塙かな
雛の戸やのどにくすしの置俥
國原や桑のしもとに春の月
さみだれのみづく家路や誘蛾灯
竹の子をこそつかせをる鹿の子かな
ほととぎす焙炉ほとほる籬かな
二三日再た沸きかへし油蝉
道作りみなひだるしやみちをしへ