雪解のゆらゆらとして枝垂梅
橋の裏大きくしみる雪解かな
しろしろと畠の中の梅一本
沈丁を流るる虻やたてよこに
山路やかたみに見えし藤の花
山吹に留守かや障子すきたれど
わか柳一すぢのりて藁庇
嬌柳さはらず伸べし釣瓶竿
声掛けて菖蒲抛葺く翁かな
そら解のはしなく落す菖蒲かな
小田の露祭提灯消えかはし
あとじさる足踏みあひぬ荒神輿
香煙の四簷しみ出て閻魔かな
産土神に頬被解く田植道
糸取や蝿の居しがむ姐被り
蚊いぶしの舳を浚ふ追風かな
蛾這入り大きな陰や誘蛾灯
眦を汗わたりゆく飴湯かな
もの憑の泣きし睫毛やはたた神
涸清水杓にためては遊びけり
百合しばし消入りしわむ 泉かな
かはほりのばたりと当る芭蕉かな
いつとなく金魚の水の上の煤
斑猫やかならず驢馬の脚の前
庭川も濁り膨れて蝸牛
雨上り蝸牛居並ぶ砌かな
ででむしや辷りうつりし筧杙
ででむしの辷りうつりの恐ろしや