和歌と俳句

阿波野青畝

甲子園

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一軒家より色が出て春着の児

早春や馬首を進むる火口原

神の我にほころびかけにけり

花の数おしくらしあふ椿かな

山又山山櫻又山櫻

故園逍遥吾にのしたがはず

蔓たれて水田のへりに下り藤

死の雨か摘まれしやはらかに

アロハ着て安息日の主人かな

登山道なかなか高くなつて来ず

赤富士に吉田の宿の覚めきらず

滝打のとどろとどろと頭鳴る

道の馬を放すも柵結はず

「過はくりかへさぬ」碑来る

北洋を帰りしの街の漁夫

山の湖をつぶてうちせる野分かな

舟乙女ひとり毬藻の歌うたふ

十和田湖星飛びたりと便りせむ

迅し十和田の湖の常乙女

ヌプリとは蝦夷なる高嶺とりかぶと

灯一つコタンの秋の夕かな

秋深し生きし古人は古書に在り

寒波急日本は細くなりしまま

雪礫あへなく没し雪に帰す

炭窯や莚巻きたる煙出し

しぐれ二十五菩薩楽奏す

書巻の気惻々たりし火鉢かな

あおぞらに外套つるし古着市