彩雲の凍てたる西へ客帰る
訃さみし嵯峨の日脚がのびるのに
火の中に反りかへりゆき厄の札
厄札を一炬に附しぬ荒雑仕
キリストの受難の画ありルオー逝く
しらべよき歌を妬むや実朝忌
落花掃くなかれとぞ鎖す御廟かな
春の汐玲瓏魚介旁午かな
大茶盛蝶ちらちらの西大寺
横着をきはむる懸巣つるでまり
天駆くるさま蛍ゆく室生川
蛍狂ふ女人高野の夜の雨
山を飛び欄を飛び夏の蝶
七月のホテル極楽鳥飾る
つくばひの知足にひびく清水かな
釣瓶寿司盛夏の町を見つつ食ふ
ふるさとの茅の輪魯に立てりける
奈良坂の葛狂ほしき野分かな
立待の月へ小声の長話
断層にであひ秋水激すなり
武蔵野のあれちのぎくに学者訪ふ
般若櫃うつろの秋のふかさかな
鶴来ずや錦帯橋に旅鞄
顔見世の和事に役者親子かな