鰯雲鯛も鮑も籠りけり 北枝
空湾や夕さりて湧く鰯雲 草城
鰯雲茜さし来て美はしき 播水
鰯雲昼のまゝなる月夜かな 花蓑
大阪やけぶりの上にいわし雲 青畝
浜名湖や隈なくなりし鰯雲 花蓑
鰯雲縫うて昼月かくれなし 花蓑
うすうすと今日仰がれつ鰯雲 風生
映りゐる田舟の閼伽の鰯雲 悌二郎
いわし雲大いなる瀬をさかのぼる 蛇笏
朝戸繰るこちらのかはも鰯雲 草田男
鰯雲この時空のまろからず 草田男
鰯雲バルーン疲れて黄のゆふべ 三鬼
鰯雲月の面てにかかりそむ 鳳作
曽我の子はここにねむりて鰯雲 蛇笏
いわし雲子がゆびさせりはるかなる 悌二郎
鰯雲百姓の背は野に曲る 草田男
鰯雲ひとに告ぐべきことならず 楸邨
鰯雲鳶をはなてり園黄ばむ 波郷
鰯雲橙青く鬱と成る 波郷
地うるむ朝空ふかし鰯雲 月二郎
枯るる音葭はなれず鰯雲 楸邨
やまびこをつれてゆく尾根いわし雲 蛇笏
鰯雲われらが舗道平らかに 友二
海と河噛み合ふ一点鰯雲 友二
本にある薬の香鰯雲 蕪城
鰯雲胸そらしてもうすき身ぞ 蕪城
鰯雲日和いよいよ定まりぬ 虚子
いわし雲忌日きのふに過ぎゆける 多佳子
鰯雲畳が遠くなりにけり 楸邨
鰯雲松の下枝に海見ゆる 占魚
トマトなほ累々と青し鰯雲 蕪城
いわし雲小諸の旅をこころざす 蛇笏
鰯雲流るるよりも静かに征く 楸邨
兒をだいて養魚池をみにいわし雲 蛇笏
閂を外す暁より鰯雲 誓子
乾坤の動くは乾の鰯雲 誓子
鰯雲高きに群れて羨し 誓子
火の見あれば鰯雲彌仰がるる 誓子
鰯雲攀づべからざる嶽の上 誓子
天覆ふ鰯雲あり放心す 誓子