憩ひつつ秋日のもとに言すくな
わたり鳥あふぐつかれし貌しろく
秋天を濁すけむりは陸へ吹け
ある夜とみにこほろぎしげく兵征けり
いわし雲子がゆびさせりはるかなる
きちきちがたち二つたち風ゆけり
秋風の草にかけ入る子をよべり
蓼あかしつめたき吾子の手をひける
橋に架け木にかけ晩稲刈りいそぐ
出征旗稲架のうしろを声とゆけり
釣の徒のゐならぶ稲架に日がかくる
海港のくらさも蓋し台風期
わがゆあみ秋日があふれ湯が溢る
残暑の扉出でゆく足音聞きまじとする
鵙ないて要塞地帯の朝めざむ
いつ果てし夏ぞもひとり膝抱けば
酔ひて子がはじめてもどる夜の野分
夏果てし沖の暗さに集魚燈
流燈を瀬波さそひて覆へす
流燈に入りしとき波襲ふ
流燈の気負ふ一燈瀬にのまる
流燈の河口に出しがいのちの灯
虚しさの花火に誘ひ誘はるる