和歌と俳句

渡り鳥

野路をくるバス待ちをれば渡り鳥 

二連れの渡り鳥なり交ひ行きし 汀女

あの雲に明日も天気よ渡り鳥 立子

渡り鳥山寺の娘は荏を摘める 蛇笏

わたり鳥あふぐつかれし貌しろく 悌二郎

鳥渡る生死はある人の世に 鷹女

洪水あとの石白く灼け鳥渡る 亞浪

松島の西日をさして渡り鳥 みどり女

鳥渡る雲の笹べり金色に 久女

雲の下蝌蚪のごとくに鳥わたる 彷徨子

鳥渡る着のみの肩や聳えしめ 友二

奈良なれば大仏殿や渡り鳥 尾崎迷堂

鳥渡り行人仰ぐ山の町 たかし

渡鳥見てゐる吾子も見てゐるか 鷹女

大恵那の屋根や端山や鳥渡る たかし

渡り鳥堤の藪を木伝ひて 虚子

鳥わたるこきこきこきと缶切れば 不死男

鳥渡る浜の松原伝ひにも 虚子

吹きあがる落葉にまじり鳥渡る 普羅

椎栗もただ昏むなり渡り鳥 波郷

渡り鳥日輪棄てし雲のひま 楸邨

鳥渡る終生ひとにつかはれむ 

わが息のわが身に通ひ渡り鳥 龍太

子にえらぶ白き毛糸や鳥渡る 真砂女

わたり鳥しづめる谷は屋島かも 秋櫻子

渡り鳥一点先翔く愛と業 草田男

渡り鳥ひろがり降りて五樹の縁 草田男

更にはらはら吸はれ加わり渡り鳥 草田男

松よりも水煙蒼しわたり鳥 秋櫻子

波しづか大うねりして渡り鳥 秋櫻子

渡り鳥微塵のごとしオホーツク 林火

渡り鳥空の色めきまだ覚めず 汀女

宍道湖や旅の我等に渡り鳥 立子

渡り鳥見る月台の白きに立ち 林火

渡り鳥乳房持つもの瀬に仰ぎ 楸邨

人はみな旅せむ心鳥渡る 波郷

山中に廃れ宿あり鳥渡る 林火

鳥渡る尾長らは森かいくぐり 波郷

病院をよぎる登校児鳥渡る 波郷

汝が国に来て汝亡し鳥渡る 林火