露の丘のぼれば空が肩つつむ
丘晩秋刈田見え遠く犬が鳴き
往きに見し蘆いなずまのなりゐたり
まんじゆさげばかりの旅の落ちつかず
秋の暮笑ひなかばにしてやめぬ
その木いつも夜寒のともし洩れてゐぬ
初嵐多忙はむしろいさぎよく
墓洗ふ母とわれの手相触れて
胡桃割る燈の円光の一家族
末枯れや身躍らす猫一文字
無月の浜白浪ありてさびしからず
遠まで見え道にひまはりなくなれり
丹波夜寒友と寝がたり二三言
むさしのの櫨の紅葉に袖触れゆく
蓑蟲とわれとの間の空気澄む
まんじゆさげ暮れてそのさきもう見えぬ
音荒く野分の蕎麦を啜るかな
禽獣の國出て秋の暮に会ふ
北上す夜汽車の 露の連結器
あをざめて月の根室の坂と海
坂の果酒を売る燈と月の海
かりがねの声の月下を重ならず
雲に触れ竜胆育つ美幌越