きこゆるは瀧の音とや曼珠沙華 万太郎
曼珠沙華互にしべのもつれつゝ 淡路女
あるほどの茎たち竝び曼珠沙華 淡路女
野路ゆきて華鬘つくらな曼珠沙華 多佳子
曼珠沙華みとりの妻として生きる 多佳子
あかあかと塙一つが曼珠沙華 たかし
曼珠沙華身ぢかきものを焼くけぶり 多佳子
曼珠沙華はふりのけぶり地よりたつ 多佳子
露の香にしんじつ赤き曼珠沙華 蛇笏
草川のそよりともせぬ曼珠沙華 蛇笏
曼珠沙華咲くとつぶやきひとり堪ゆ 多佳子
曼珠沙華けふ衰へぬ花をこぞり 多佳子
曼珠沙華咲いてまつくれなゐの秋 鷹女
曼珠沙華咲けりいくさの場を思ふ 鷹女
つはものの命は消ぬる曼珠沙華 鷹女
あはれ来て野には咏へり曼珠沙華 鷹女
ちゝはゝの俄かに恋し曼珠沙華 茅舎
蒼穹を鵙ほしいまゝ曼珠沙華 茅舎
村の上の山にも赤し曼珠沙華 たかし
僧房へ少し山路や曼珠沙華 たかし
曼珠沙華三界火宅美しき 茅舎
曼珠沙華恙なく紅褪せつつあり 風生
年ごろの似てかへりみて曼珠沙華 汀女
父若く我いとけなく曼珠沙華 汀女
曼殊沙華大路の際にあはれなり 遷子
離郷の目に畦あり曼珠沙華が咲き 楸邨
曼珠沙華すぎこころふと危し 楸邨
藪つ蚊の来てまださすや曼珠沙華 万太郎
曼珠沙華露に潰えてしまひけり 万太郎
襤褸袷赤大名の曼珠沙華 万太郎