日のひかり露の微に入り細に入り
露の宿附箋の手紙届きけり
掌中に栗の硬さの小気味よさ
掌中の栗とて汗を握り〆め
掌中の汗ばむ栗の肌の艶
栗の肌黒本尊はてりたまふ
墓の前低き紅葉の一枝なる
ちゝはゝの俄かに恋し曼珠沙華
蒼穹を鵙ほしいまゝ曼珠沙華
蟲の闇銀杏は乳房垂れにけり
鏡花めく唐縮緬の案山子かな
月の寺鮑の貝を御本尊
甃硯のごとき良夜かな
八ケ岳露の御空を噛みにけり
芋の葉や露の薬研の露微塵
葉月汐鴎の袂長きかな
芋の露直径二寸あぶなしや
青芭蕉一丈露を飛ばしけり
露打つて翔りし影は天の鵙
鵙猛り柿祭壇のごとくなり
十三夜隴まつすぐに霧の這ふ
霧の森島のごとくになりにけり
少年よ芋の葉を打擲する勿れ
白菊に今宵の酒をそとふくみ