くき草をはいて大いなる菊一花 石鼎
朝に掃き夕に掃くや菊に住む 虚子
歩をうつす千輪咲の菊の前 烏頭子
白菊に夕影ふくみそめしかな 万太郎
貧しう住んでこれだけの菊を咲かせてゐる 山頭火
干網のかげをあびをり菊の鉢 虚子
掛稲をとりて黄菊の尚存す 虚子
せゝらぎのほとりに咲ける菊もよし 青邨
縁の上によき一鉢の雨の菊 花蓑
菊の香や鶴はしづかに相寄れる 秋櫻子
鶴の来て翼伸べたる黄菊かな 秋櫻子
しら菊の傘にあまれば霑れにけり 悌二郎
顔抱いて犬が寝てをり菊の宿 虚子
菊の鉢並べしまゝに雨の庭 花蓑
麗はしき菊なりければ蟲もこぬ 秋櫻子
わがいのちさびしく菊は麗はしき 秋櫻子
わがいのち菊にむかひてしづかなる 秋櫻子
疲れてはおもふことなし菊の前 秋櫻子
椅子よせて菊のかほりにものを書く 秋櫻子
さびしくてならねば菊を買ひに出ぬ 悌二郎
菊さしてつくづく見れば菊さびし 悌二郎
きよらかな井のふかぶかと菊畠 草城
白菊や蒼き夕靄遠なびき 草城
菊に羞づ菊を詠ぜし我が詩かな たかし
人形なき廊下の菊に憩ひけり たかし
ささげもつ菊みそなはせ観世音 久女
菊かをり金槐集を措きがたき 秋櫻子
菊の甕に藍もて描きし魚ひとつ 秋櫻子
右衛門七は十八歳よ菊たむけ 青邨
思へるはをさならのこと鉢の菊 悌二郎
菊に来るひまをぬすむも朝のうち 悌二郎
こころふとせかれつ去りし菊の前 悌二郎