霧の原眞神がゆける萱なびき
夕立雲葛咲く谷へ下りしづむ
鰯雲天にひろごり萩咲けり
関こえて朝ひぐらしの丘いくつ
蜩や奥の青嶺にうちひびき
関のあとつれだちゆくや田草取
防波堤裸子むれて鯖を釣る
裸子のみな四五歳の日焼はや
鯖の子も四五寸あらめ竿しなひ
竿かりてわれも釣り得つ鯖の子を
苫舟を蝗のつぶて打ちにけり
晩稲田のせはしき日なり網代守
手をのべし落穂を渦にとられけり
野の落穂ひとの書斎に持ちて入りぬ
沖の鯊大きくなりぬ冬隣
潮さして鰭よろこべり魚籠の鯊
薄氷のこのごろむすび蓮枯れぬ
麗はしき菊なりければ蟲もこぬ
わがいのちさびしく菊は麗はしき
わがいのち菊にむかひてしづかなる
疲れてはおもふことなし菊の前
椅子よせて菊のかほりにものを書く