穂高岳霧さへ嶺を超えなやむ
穂高岳真日さす霧の立ちにけり
鯉の苞蓮の莟と厨邊に
早稲掛けて蓮のみだれは隠れけり
四つ手網雑魚をふるひぬ初あらし
蝉時雨草加の町はなほありぬ
稲架出来てけふの秋晴去りにけり
葛飾の丘がかくれて稲架立ちぬ
鶺鴒のたちてさびしき鳴子かな
苫舟のあたりてゆらぐ案山子かな
雨に耐へて鯊釣舟の苫ならぶ
鯊釣れて葭のあらしに落ちにけり
ひとり漕ぐ鯊釣舟も帆を張りぬ
菊の香や鶴はしづかに相寄れる
鶴の来て翼伸べたる黄菊かな
菊の傘鶴の佇む影さして
菊日和夕さむくして鶴鳴けり
鴨下りてくらき月さす苫のうち
ひかり飛ぶものあまたゐて末枯るる
手袋の赤き子が来て鶴を見る
明けゆくや浅間の火さへ凍る窓
雪ふかくヒュッテの戸あり松飾
雪の山はだかり暮れて谿さむし
浅間の火雲染めて年ゆかんとす