和歌と俳句

鶺鴒 せきれい いしたたき

せきれいの尾やはし立をあと荷物 蕪村

鶺鴒の庭籠を覗く流哉 白雄

忘れたる笠の上なり石たゝき 子規

追ひつめた鶺鴒見えず渓の景 子規

鶺鴒や三千丈の瀧の水 子規

叩く尾のすりきれもせず石敲き 子規

鶺鴒の飛び石づたひ来りけり 子規

飛ぶさまや尾につらさるゝ石叩き 子規

鶺鴒や岩を凹める尾の力 子規

鶺鴒や欄干はしる瀬田の橋 子規

鶺鴒よこの笠叩くことなかれ 子規

鶺鴒や水痩せて石あらはるる 子規

鶺鴒や小松の枝に白き糞 漱石

鶺鴒のとどまり難く走りけり 虚子

せきれいや水裂けて飛ぶ石の上 鬼城

牧水
松山の秋の峡間に降り来れば水の音あをしせきれいの飛ぶ

谷底を一つ歩けり石たゝき 石鼎

鶺鴒や谷のほとりのつぶれ藪 石鼎

牧水
鶺鴒 しろがねの銭 かぞへゆく 冷き声に 啼く真昼かな

牧水
いしたたき ちさきめうとの 頬を寄せて 啼くよ浅瀬の 白石のうへに

牧水
いしたたき やまずしもなく さびしさに わが日の昼も 更けにけるかな

牧水
いしたたき ちちと飛びかひ 啼く久し 真白川原の 瀬を浅みかも

牧水
木々の影 はだらに黒き 川隈に 啼きつつ去らぬ 二羽いしたたき

牧水
つち掘れる金属の音のをちこちに冴えつつ真昼せきれい飛べり

牧水
鶺鴒来てもこそ居れ秋の日の木洩日うつる岩かげの淵に

瀧風に吹かれあがりぬ石たたき 蛇笏

鶺鴒のとみに高まり行く弧かな 汀女

せきれいに夕あかりして山泉 蛇笏

せきれいや渚を消えて又居れり 青畝

奔端や又飛び消えし石叩 花蓑

鶺鴒や水際明りに二三匹 花蓑

風さそふ落葉にとぶや石たたき 蛇笏

鶺鴒の吹分れても遠からず 青畝

鶺鴒や羽づくろう腋しらしらと 青畝

せきれいのまひよどむ瀬や山颪 蛇笏

簗くづす水勢来りぬ石叩き 普羅

白川や二羽ゐてとびし石叩 禅寺洞

岩淵や棲むめる鶺鴒一とつがひ 蛇笏

磐石をはしれる水の石たたき 蛇笏

鶺鴒のとどまり難く走りけり 虚子

鶺鴒のつと来てとまる筏かな 淡路女

鶺鴒を忘るともなく見失ふ 立子

鶺鴒のひるがへり入る松青し 秋櫻子

風吹いてはやき瀬翳の石たたき 蛇笏

せきれいや四五日海に波の絶え 万太郎

秋風や鶺鴒二つ飛びたる日 多佳子

鶺鴒の吹分れても遠からず

山川の秋は来にけり黄鶺鴒 たかし

山川の鶺鴒の黄の朝まだき たかし

せきれいの叩く泉石ひきしまり 青畝

岩うらへ鶺鴒の来て現れず 草田男