盂蘭盆会遠きゆかりとふし拝む
山の名を思ひ出しつつ花野ゆく
霧襲ひ来て佇める花野かな
たとふれば真萩の露のそれなりし
白萩の露のあはれを見守りぬ
コスモスの花あそびをる虚空かな
参りたる墓は黙して語らざる
快き秋の日和の匂ひかな
娘の訪ひ来すぐ去ることも秋の風
流れ星はるかに遠き空のこと
大空の青艶にして流れ星
星一つ命燃えつつ流れけり
貴船出て立寄る柿の円通寺
ここも亦柿の村なる円通寺
よろめきて杖つき萩の花を見る
暑かりし日を思ひつつ残暑かな
大樹あり倚り佇めば秋の風
暁烏文庫内灘秋の風
門外は只秋風の円通寺
石庭の石皆低し秋の風
秋晴や一片雲も爪弾き
昂ぶれる人見て悲し秋の風
ほどけゆく一塊の雲秋の空
秋の雲大仏の上に結び解け
朝顔を一輪挿に二輪かな
秋の雲浮みて過ぎて見せにけり
松原の続く限りの秋の晴
秋風にもし色あらば色ヶ浜