和歌と俳句

花野

墓と共に花野に隠れゐたかりし 多佳子

花野には岩あり窪あり花ありて 誓子

花野やはらか移動文庫の車輪過ぎ 静塔

山の名を思ひ出しつつ花野ゆく 虚子

霧襲ひ来て佇める花野かな 虚子

こしかたのゆめまぼりしの花野かな 万太郎

汗見えてかへす貸馬夕花野 爽雨

霧はひて林没るる花野かな 風生

安曇野の花野に橋を釣りにけり 青畝

新しき朝の日ざしよ大花野 立子

信濃路や花野のあなたにも花野 青畝

大空のきはみと合ひし花野かな 青畝

噴煙や花野に坐して花摘まず 

庭として湖へ花野を傾くる 風生

さびしさの花野踏ましむ火山礫 汀女

通りみち一つ花野に癖つけて 静塔

まつしぐらに花野は霧にもどりけり 汀女

はじまりし旅の花野は道辺より 爽雨

花々のさだかに花野道ますぐ 爽雨

這松を抽きつつ尾根も花野なす 爽雨

屋根草の花野つづきに一戸あり 爽雨

花野なるサイロも糧の満つるころ 爽雨

下山講花野に一人二人脱け 静塔

花野には蟠と書かるる巌あり 静塔