墓と共に花野に隠れゐたかりし 多佳子
花野には岩あり窪あり花ありて 誓子
花野やはらか移動文庫の車輪過ぎ 静塔
山の名を思ひ出しつつ花野ゆく 虚子
霧襲ひ来て佇める花野かな 虚子
こしかたのゆめまぼりしの花野かな 万太郎
汗見えてかへす貸馬夕花野 爽雨
霧はひて林没るる花野かな 風生
安曇野の花野に橋を釣りにけり 青畝
新しき朝の日ざしよ大花野 立子
信濃路や花野のあなたにも花野 青畝
大空のきはみと合ひし花野かな 青畝
噴煙や花野に坐して花摘まず 貞
庭として湖へ花野を傾くる 風生
さびしさの花野踏ましむ火山礫 汀女
通りみち一つ花野に癖つけて 静塔
まつしぐらに花野は霧にもどりけり 汀女
はじまりし旅の花野は道辺より 爽雨
花々のさだかに花野道ますぐ 爽雨
這松を抽きつつ尾根も花野なす 爽雨
屋根草の花野つづきに一戸あり 爽雨
花野なるサイロも糧の満つるころ 爽雨
下山講花野に一人二人脱け 静塔
花野には蟠と書かるる巌あり 静塔