和歌と俳句

皆吉爽雨

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12

子芭蕉の地を割る空の高かつし

天高し沼をめぐりて相逢へば

松山の句座に柿腹冷えてあり

岩山といへど粧ひ一わたり

黙しゐる梢のの威あきらかに

椋鳥わたる一羽鋭声に引返し

小鳥くる山の平らの四方の樹に

汗見えてかへす貸馬夕花野

舳波たつ阿武隈渡舟鮭の秋

鮭のぼるをりをり岸に相睦み

旅の吾も眼なれて鮭ののぼる見ゆ

吊柿をとみに減らせしもてなしぞ

秋晴の蜂に追はれもして庭師

雲消えしところきらめき秋晴るる

赤松に秋山夕日朱をつくす

拾ふ籬結はねばその庭に

せせらぎに拾ひしのことに大

はねつるべ秋澄む木々に立ちまじり

菱一座一座と水の澄むがまま

澄む水のおのれをりをりうちふるひ

芹長けて秋の水べにけしきだつ

鱒すぎしあと秋水にものも見ず

をゆく杉一もとづつ迫り

鐘楼に法の山霧凝りて見ゆ

杉ますぐ杉なゝめさまよへり