新秋や鹿に手をあげ帰校生
住みかはる窓の灯色やちちろ虫
花はるつ萩の小虫も枯色に
埋め樋の音にこそたどれ紅葉山
はらからを案内の尼や紅葉山
灯さるる尾をひきずれる燈籠かな
仮堂に重なる仏秋の蝉
下山駕とく来てゐるや露の庭
勤行も燈籠ともすも一人かな
秋風の鐘の面の仏かな
古縄にすがれる蟹や落し水
茸狩の土産そろへある鐘楼かな
菱採のはじめてあげし面かな
たれかれの木の間すがたや菌狩
月を待つ床几のひまのゆききかな
月出づと声のつたはる床几かな
かへり見て母の達者や菌山
七夕の色紙結ふ手のあひにけり
仏壇とまはり燈籠と灯るのみ
墓参みち迷ほもしつつ久しぶり
旧道は稲架のみちなり永平寺
柿をもぐ煤のたれゐる梯子かな
落穂拾ひ見しより汽車は暮れにけり
裾山は桑の黄葉や渡り鳥