露径深う世を待つ弥勒尊 茅舎
夜店はや露の西国立志編 茅舎
露散るや提灯の字のこんばんは 茅舎
白露に阿吽の旭さしにけり 茅舎
白露をはじきとばせる小指かな 茅舎
金剛の露ひとつぶや石の上 茅舎
白露や狐の顔のぬるゝまで 喜舟
太白の照るばかりなり露時雨 青畝
下山駕とく来てゐるや露の庭 爽雨
白樺に月照りつゝも馬柵の露 秋櫻子
露冷えの灯の更けてゐる軒端かな 草城
月落ちて露の匂へる木の間かな 草城
行人の顔あきらかや露の秋 草城
白秋
女童が睫毛にやどる露のたま月のありかは雲の上にして
露置くと月の芒に手を触れし 虚子
落ちかゝる葉先の露の大きさよ 立子
大杉の露をおぼゆるはだへかな 草城
月の夜を重ねて露のにほひけり 草城
獨り居の膝を崩さずつゆしぐれ 草城
露の玉走りて残す小粒かな 茅舎
露の玉をどりて露を飛越えぬ 茅舎
露微塵忽ち珠となりにけり 茅舎
大露や芭蕉ほとぼる薄煙り 茅舎
細りつつ追ひすがらんと露の玉 立子
夜の芝生歩けば露のはじき飛ぶ たかし
閂を軋りはづしてけさの露 貞
子供等が露を叩いてやつて来し 汀女
搦手の木曽川へ落つ露の径 たかし
露深き犬が尾を振りやめぬかな 草田男
露を来て言葉規しき牛乳くばり 槐太
日のひかり露の微に入り細に入り 茅舎
露の宿附箋の手紙届きけり 茅舎
朝露のかくまで太く美しく 立子