松本たかし
稲妻の四方に頻りや山の湖
目覚むれば潮騒ぎをる野分かな
新涼や膳に上りし湖の魚
起出れば秋立つ山の八方に
流木を上げんと待てり秋出水
山荘の露の桔梗や主病む
逗留や立待月に立ちまじり
搦手の木曽川へ落つ露の径
鮎釣と乗りし渡舟や恵那の秋
親子馬ひいて戻るや黍の月
木曾谷の奈落に見たる銀河かな
潮ひけば汚れて立てり葦の秋
一俵も実を拾ふとか榧大樹
あかあかと塙一つが曼珠沙華
相似たる鶏頭二本唯立てり
芭蕉より芒が高し門の秋
人ひとり入れて締りぬ野分の戸
遠き家の朝な夕なや葉鶏頭
稲妻に夜坐美しや草の宿
月明の道あり川ともつれつつ
粟畑のあたり明るし山の裾
打ち止めて膝に鼓や秋の暮
俤やいつも砧を打ち打ちて
竹山の竹伐りはじむ秋の風
一日や竹伐響竹山に