稲妻や誰れが頭に砕け行く 子規
稲づまや一筋白き棉ばたけ 子規
稲妻の壁つき通す光りかな 子規
稲妻は雫の落る其間かな 子規
稲妻に金屏たたむ夕かな 子規
稲妻やをりをり見ゆる滝の底 漱石
稲妻の淋しき町に出でたりし 虚子
北側を稲妻焼くや黒き雲漱石
稲妻の目にも留らぬ勝負哉 漱石
稲妻の砕けて青し海の上 漱石
断食の水恋ふ夜半や稲光 碧梧桐
稲妻や豊年祭過ぎし空 放哉
稲妻や芝滑らかに牧場雨 碧梧桐
赤彦
湖のあふれ未だ引きやらぬ稲原の夜のいろ深し稲光りする
稲妻に近くて眠り安からず 漱石
晶子
あなあはれ初秋の夜の雲間よりいなづま走るおほわだつみへ
高蘆の色あらはすや稲光り 石鼎
稲妻や舟に干しある濯ぎもの 石鼎
稲妻や何ぞ北斗の静なる 龍之介
稲妻に射られて松の青さかな 草城
稲妻に明るむ傘の水浅黄 草城
稲妻を怖れて長き睫かな 草城
稲妻の射とほす蚊帳に眠りけり 草城
稲妻のはらはらかゝる翠微かな 花蓑
稲妻に水田はひろく湛へたる 久女
稲妻や赤城幾峯八つ裂に 喜舟
稲妻や家居置きたる山の原 喜舟
稲妻のはるかにしをり水を汲む 林火
稲光り秋の祭が来るちふ 普羅
いなづまにつめたきかごの野菜かな 林火
稲妻のゆたかなる夜も寝べきころ 汀女
刈込の庭木の梢稲光 汀女
前空となく稲妻のひりかりき 草田男
寝しづまる野の稲妻や星たゞし 貞
トラムプの独り占稲光 立子
稲妻のあをき翼ぞ玻璃打てり 鳳作
稲妻の巨き翼ぞ嶺を打てる 鳳作