舟人や秋水叩く刈藻竿
藻に弄ぶ指蒼ざめぬ秋の水
月の頬をつたふ涙や祷りけり
熱涙拭ふ袂の緋絹や秋袷
われにつきゐしサタン離れぬ曼珠沙華
コスモスくらし雲の中ゆく月の暈
コスモスに風ある日かな咲き殖ゆる
間借して塵なく住めり籠の菊
稲妻に水田はひろく湛へたる
語りゆく雨月の雨の親子かな
掘りかけし土に秋雨降りにけり
走馬燈いつか消えゐて軒ふけし
ころぶして語るも久し走馬燈
岐阜提灯庭石ほのとぬれてあり
一人居の岐阜提灯も灯さざり
星の竹北斗へなびきかはりけり
うち曇る空のいづこに星の恋
板の如き帯にさされぬ秋扇
虫をきく月の衣手ほのしめり
虫籠をしめし歩みぬ萩の露
放されて高音の虫や園の闇
鳴き出でてくつわは忙し籬かげ
大波のうねりも去りぬ鯊釣る
鯊釣る和布刈の礁へ下りたてり
野菊むらかがめば風の強からず