しろじろと花びらそりぬ月の菊
白菊に棟かげ光る月夜かな
咲きほそめて花瓣するどき野菊かな
わが傘の影の中こき野菊かな
梶の葉に墨濃くすりて願ふこと
七夕百句青き紙にぞ書き初むる
七夕竹を病む子の室に横たへぬ
七夕や布団に凭れ紙縒る子
銀河濃し救ひ得たりし子の命
初秋の土ふむ靴のうす埃
まろ寝して熱ある子かな秋の暮
熱下りて蜜柑むく子の機嫌よく
熱の瞳のうるみてあはれ蜜柑吸ふ
苔まろく踏み凹めたる木の実かな
深耶馬の空は瑠璃なり紅葉狩
濃竜胆浸せる渓に櫛梳り
茸やく松葉くゆらせ山日和
野菊はや咲いて露けし墓参道
墓の前の土に折りさす野菊かな
障子締めて炉辺なつかしむ黍の雨
新蕎麦を打つてもてなす髪鄙び
掘つて来し大俎板の新牛蒡
芋汁や紙すすけたる大障子
三軒の孫の喧嘩や青林檎
鬼灯やきき分けさときひよわの子