秋空につぶてのごとき一羽かな
湯さめして足袋はく足や秋の雨
秋雨に縫ふや遊ぶ子ひとりごと
燈に縫うて子に教ゆる字秋の雨
片足あげて木戸おす犬に秋の雨
よそに鳴る夜長の時計数へけり
髪巻いて夜長の風呂に浸りけり
いつつきし膝の絵具や秋袷
走馬燈に木の間の月や子等は寝し
走馬燈俄の雨にはづしけり
髪すねて遂に留守しぬ秋祭
岐阜提灯うなじを伏せて灯しけり
岐阜提灯庭石ほのと濡れてあり
虫なくや帯に手さして倚り柱
玄界の涛のくらさや雁叫ぶ
西日して薄紫の干鰯
花散りて甕太りゆく柘榴かな
降り足らぬ砂地の雨や鳳仙花
大輪の藍朝顔やしぼり咲き
朝顔や濁り初めたる市の空
摘み摘みて隠元いまは竹の先
あてもなく子探し歩く芒かな
白萩の雨をこぼして束ねけり
草刈るや萩に沈める紺法被
萱刈るや崎荒れてゐる濁り海
箒おいてひき抜きくべし鶏頭かな