灯ともれる障子ぬらすや秋の雨 虚子
石の上の埃に降るや秋の雨 虚子
裸火を抱く袖明し秋の雨 虚子
秋雨や身をちぢめたる傘の下 虚子
秋雨の雪に間近き山家かな 虚子
漱石
眠らざる夜半の灯や秋の雨
龍之介
秋雨や大極殿の雨の漏
あきさめの巌うるほすや樹々の中 蛇笏
石鼎
傘一つに寄る三人や秋の雨
石鼎
われ一人にとまる電車や秋の雨
鬼城
御仏のお顔のしみや秋の雨
鬼城
秋雨や柄杓沈んで草清水
鬼城
秋雨や石にはえたる錨草
晶子
地の上のものの総てを斬りきざむ白刃の如く秋雨ぞ降る
秋雨や石に膠す蝶の羽 虚子
屋根越しに見る藪の穂や秋の雨 泊雲
龍之介
秋雨や庭木植ゑつく土の色
秋雨や靄の往来に窓くらし 泊雲
板屋打つ音次第に強し秋の雨 泊雲
柑園の夜に入る燭やあきのあめ 蛇笏
石鼎
秋雨や紫苑傾く水の上
石鼎
秋雨や雫つらねて松の枝
石鼎
縦横にぬれ伏す稲や秋の雨
家づとに蕎麦粉忘れじ秋の雨 水巴
石鼎
秋雨や山あきらかに京の町
久女
湯さめして足袋はく足や秋の雨
久女
秋雨に縫ふや遊ぶ子ひとりごと
久女
燈に縫うて子に教ゆる字秋の雨
久女
片足あげて木戸おす犬に秋の雨
青畝
秋雨や山あきらかに京の町