秋雨や靄の往来に窓くらし
板屋打つ音次第に強し秋の雨
貝割菜の一叢生や秋の風
筧の水しばしば崖に吹きあて野分哉
日に焦げて上葉ばかりの紅葉かな
葉の戦ぎに少し応へて芋の茎
雨やんで月に藁屋の軒雫
落月に鴟尾すさまじや山の寺
馬つなぐ橋の袂の地蔵盆
萩散るや掃き拡げたる潦
北嵯峨や萩より抜けて松の幹
土の皺に流れたまりて萩の花
葛の花四五聯かけて巌かな
物干すに躓く石や鳳仙花
鹿の足よろめき細し草紅葉
ガラス戸の青みどろなり後の月
藪が根を流るゝ溝や後の月
疾くゆるく露流れ居る木膚哉
汲水にコスモス映る祭かな
真つ青き蜜柑も売るや秋祭
蝗くはへて獣の如き蟷螂かな
細葉はさんであと足高しきりぎりす