和歌と俳句

後の月

葉まばらに柚子あらはるる後の月 子規

黒谷がまづ打つ初夜や後の月 虚子

荒削り羯摩が鬼の十三夜 碧梧桐

露けさに障子たてたり十三夜 虚子

三人は淋しすぎたり後の月 虚子

淋し寒し出羽の清水後の月 碧梧桐

飲みつぎて倒れず戻る十三夜 碧梧桐

膝長う座れる人や十三夜 普羅

白々と縁にさし来ぬ後の月 普羅

橋の上に猫ゐて淋し後の月 鬼城

後の月そと戸を明けて句を案ず 花蓑

ガラス戸の青みどろなり後の月 泊雲

藪が根を流るゝ溝や後の月 泊雲

後の月稲架を離れて蒼さかな 泊雲

宵も早籬陰りけり十三夜 青畝

俄かなる招きの文や十三夜 淡路女

売れ残る八百屋の芒後の月 淡路女

なつかしや後の月夜の早火鉢 草城

物の怪に吠え立つ犬や後の月 草城

まらうどに後の月夜の風呂沸きぬ 草城

後の月寺領は黍の不作かな 草城

湯ざめして君のくさめや十三夜 草城

芒の香こもりて雨の十三夜 みどり女

雨に剪りし芒香りぬ十三夜 かな女

わが淹れてわがすゝる茶や後の月 草城

見とほしの道のむなしき十三夜 草城

門くゞる家の上なり後の月 かな女

あさがほの花照りそめつ後の月 水巴

後の月塀に落ちたるひかりかな 万太郎

庭山の朴の木立や後の月 たかし

月高く炉火旺んなれ十三夜 たかし

静なる自在の揺れや十三夜 たかし

山越に濤音聞ゆ十三夜 泊雲

賑やかに障子開けたり十三夜 立子

江の島の狭き渚や後の月 たかし

島人の墓並びをり十三夜 たかし

せゝらぎの現はに光り十三夜 泊雲

せゝらぎの音草がくれ十三夜 泊雲

うすらげる靄の中より後の月 花蓑

一塩の鰯焼きけり十三夜 喜舟

さりげなき小菊の白や十三夜 喜舟

後の月沼にうつりて更けにけり 草城

山陰の旅も終りや後の月 立子

来あはせて後の月なり泊雲居 立子