和歌と俳句

後の月

海浜の今宵暖か十三夜 立子

十三夜月うつせみの泪眼に 鷹女

まだつゞく出水のはなし十三夜 万太郎

おちあひし風邪聲同士十三夜 万太郎

十三夜雲まづ山をかくしけり 万太郎

十三夜孤りの月の澄みにけり 万太郎

は皆渦潮しろし十三夜 秋櫻子

汐さやぐ汀の灯籠十三夜 青畝

雨いつか菜畑に晴れ十三夜 汀女

十三夜花茎長きゼラニューム 汀女

大山の裏に雲無し十三夜 青畝

セーターを宿着に着込み十三夜 悌二郎

後の月後の入院と誌しけり 波郷

十三夜酸素の水沫むせぶなり 波郷

争は久し瀬と岩十三夜 静塔

雲の来てまた一すすみ後の月 爽雨

霧こめて山国くらし十三夜 林火

山中を出て川ひかる十三夜 林火

老友の欠けしと泣きぬ十三夜 青畝

旧道はくねる本筋十三夜 静塔

落柿舎を出て影法師十三夜 青畝

落柿舎に一像一机十三夜 青畝

門前や走り止らぬ十三夜 みどり女

天と地に別れ別れに十三夜 みどり女