山中を出て川ひかる十三夜
鳥立ちしあとに入りゆき蘆を刈る
藺作して山も加はる火の祭
迎鐘ラムネ抜く音を隣りたる
子を抱くはばつたり床几地蔵盆
月光にけぶれる山を高野といふ
河港月夜白きのれんにめしの二字
望月の上汐の香を伴へり
月の橋川の港に懸りけり
十五夜の田舎銀座の裏は磯
旅終へて萩刈ることに今日の妻
鷹流れたり一村の柚子照らふ
柚子に目を遣り隠栖をなつかしむ
杉の間の無明長夜の霧雫
月無くも朱椀ゆたかや芋煮会
浦守る佛のありて月の海
蓑虫に月或る稿の書出しに
粗朶を積み新藁を積み嫁も来る
梨を分け病人のことたづねけり
ぶつかつて来る風のあり野菊晴
柿食うて暗きもの身にたむるかな
盆迎ふ山中鳥語耳満たす
世の隅のうたげのうたに野分かな
初穂見たり電車も伊勢に入りゆけり