和歌と俳句

大野林火

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風の月すぐ更くるかな遠蛙

木の芽うつる水は流れてゐたるかな

墓もうで花菜をゆけば夢のごとし

身を疲らせて春夜をねむる術おぼえ

れんげうの朝なり妻も子もとほき

ひそひそと落花にくるる塀の内

来し水夫に海の匂ひせる

ふと鳴いて白昼やさし野の

雁帰る町に生徒とみやげ選る

竹秋の夕日燃え人をおどろかす

芽ぶきそむ森の内外に日は溢れ

椿山夫婦にて漕ぐ舟が見ゆ

乳牛の斑白うつくし豆の花

大根の花の雪白子は育つ

天城嶺の間の草山焼かれたり

蝌蚪の水いづこの緑うつるらん

竹の秋ひとすぢの日の地にさしぬ

バスとまる春日の道のなほ上へ

遠き花菜暮るればちかき花菜浮ぶ

冴え返る日々東京の噂きこゆ

燈ぼてりの頬にさだかや春の雪

枯蘆の青める中ゆ雲雀あがる

春の虹となりの家も窓ひらく

おとなびてつとめを語る卒業せり

花いまだ三分の夕べ風邪ひきぬ