和歌と俳句

竹の秋

虚空めぐる土一塊や竹の秋 蛇笏

私邸にて政務見つありぬ竹の秋 橙黄子

午後の日の鏡の如し竹の秋 泊雲

空ふかく蝕ばむ日かな竹の秋 蛇笏

谷川にほとりす風呂や竹の秋 蛇笏

廟事務所に鳴れる電話や竹の秋 橙黄子

崖土の西日にこぼれ竹の秋 泊雲

夕されば山背風は消ゆる竹の秋 石鼎

ちる笹のむら雨かぶる竹の秋 蛇笏

竹の秋祠も見えぬ鳥居かな 龍之介

竹の秋茜の産衣ぬひけらし 龍之介

竹の秋道山科に入りにけり 万太郎

本堂に電燈つくや竹の秋 普羅

杉の木にこもる鴉や竹の秋 石鼎

渓流のをどる日南や竹の秋 蛇笏

平林寺門前竹の秋の関 茅舎

青天や孟宗藪の竹の秋 石鼎

竹の秋菜園繁りそめにけり 波郷

ここにある離宮裏門竹の秋 虚子

竹秋の夕日燃え人をおどろかす 林火

竹の秋ひとすぢの日の地にさしぬ 林火

滋賀の雨花菜つづきに竹の秋 蛇笏

竹の秋道山科ひ入りにけり 万太郎

顔叩き顔緊らする竹の秋 林火