供養鐘ひねもす花に撞かれけり
塔みゆる道となりたる櫻かな
奉納の幟みえきし櫻かな
つきひぢの内外の花のさかりかな
冷えこみのけさもきびしき櫻かな
花疲れおいてきぼりにされにけり
肚からの貧乏性や啄木忌
竹の秋道山科へ入りにけり
著つけ浅黄浅黄は春を惜むいろ
雛の夜の雛の料理や金田中
東京の雁ゆく空となりにけり
大枯木よりまづ霞みそめにけり
永き日や目に押しあつる蟲めがね
鉛筆を削りためたる日永かな
春の灯の水にしづめり一つづつ
春の灯のまたたき合ひてつきしかな
人の世のかなしき櫻しだれけり
帯に下げし古手拭や花の中
あきらめてしまひし末の櫻かな
花冷えのうどとくわゐの煮ものかな
花冷えのみつばのかくしわさびかな
花冷えの燗あつうせよ熱うせよ
春の風ふり返らるる月日かな
雪のふる夢よりさめし朝寝かな
小でまりの花に風いで来りけり