春雨や枯らすに惜しきいのちの根
春雨や奇しくも癒えしわらは病
椿落つ妬心の闇にかさね落つ
蹴る鞠のそれてかげろふゆくへかな
春の日やおのずの身のこなし
櫻餅松葉屋とどけ来りけり
そのころをかたりて飽きず櫻もち
櫻餅うき世にみれんあればかな
連翹やかくれ住むとにあらねども
連翹や日々不二のくつきりと
花待てばはつ筍のとどきけり
散る花にそそぐ泪とこたへけり
白木屋の繁昌さなり花曇
やみ夜とは月夜のはての蛙鳴く
菜の花の黄色もまじへけり雛あられ
手にうけて雪よりかるし雛あられ
雛あられねもごろつつみくれしかな
年月のまことつもりし霞かな
はらのたつほど波たたぬ日永かな
連翹のはなちそめたるひかりかな
来し方をつつみて花のさかりかな
万亭の花冷えくらき襖かな
舟ばたを敲くは誰ぞ花見舟
声高の一人は誰ぞ花見舟
シクラメンおぼろ哀しきしろさかな