和歌と俳句

桜餅

子規
花の香を 若葉にこめて かぐはしき 櫻の餅 家づとにせよ

三つ食へば葉三片や櫻餅 虚子

灯火の下に土産や桜餅 虚子

さくら餅食ふやみやこのぬくき雨 蛇笏

櫻餅千住の花の菓子屋かな 万太郎

櫻餅言問は遠き身寄かな 万太郎

櫻もち籠を流せば鴎かな 万太郎

雨水は溝を走れり櫻餅 普羅

桜餅紅葉鏡花好み読む 喜舟

乾きたる葉のけうとさよ櫻餅 草城

櫻餅うちかさなりてふくよかに 草城

大風の障子閉しぬ桜餅 龍之介

雛しまへばぽつぽつ雨や桜餅 みどり女

桜餅のんでしまへば笑ふにおそし 爽雨

桜餅人の寒さに匂ひいでし 水巴

夜を凍てて薄色褪せずさくら餅 水巴

雨を来し人ひとくさし桜餅 石鼎

唐草のゆたんの前や桜餅 石鼎

桜餅つゝめる紙の濡るゝかな 喜舟

桜餅が竹皮のまゝ解かずにある 碧梧桐

花風にとびし一葉や桜餅 風生

遊園の春とゝのひぬ櫻餅 秋櫻子

分けのぞく暖簾の顔や桜餅 櫻坡子