春泥に傾く芝居幟かな
芽ぐみたる枝賑はしや影法師
花風にとびし一葉や桜餅
真下なる天龍川や蕨狩
夜桜や遠ざかり来て顧る
白酒の酔ほのめきぬ長睫毛
よぢれ伸びし蘭一茎や縁日永
霽れ際の風が出てきし柳かな
山吹や濛雨の中の奥座敷
山吹の檜垣ぬけ出し一枝かな
沈丁の毬に芝生や庭好み
郊行や彳む水のぬるみたる
下萌や籬のうちは百花園
枯笹にたけりうつりの畦火かな
ありそめて道の辺につむ桜草
藻の蛙鳴きこたへつつ向き直り
一むらの芽立ち柳や蛇籠より
ほのめきてよそ木のひまの辛夷かな
淡雪の舞ひ戯ぶるる垣穂かな
道の辺や羽子沈みゐる芹の水
垣の辺やぬるみそめたる小田の水
ともかくも卒業したるめでたさよ
うなゐ髪あぐべくのびぬ卒業す