和歌と俳句

富安風生

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田の中の大切株や春の雨

蕗の薹木賊の中にほうけたり

渓深く春雨傘をつらねけり

一もとの花の盛りの牧の春

や海のやうなる杉木立

糸柳障子灯りて見えにけり

花見幕張つて干潟の茶店かな

美しき砂をこぼしぬ防風籠

あげ舟に海はかくれて防風摘

海棠やかきくらし降る法の雨

大岩のごろりごろりと花馬酔木

石階の滝の如しや百千鳥

藤の雨少し明るくなりにけり

お濠端歩いてをれば春めける

芹摘のはひりし門の梅の花

ペン皿のうすき埃や花曇

桜餅かけ紙の絵の都鳥

見えてゐる春雨川のさよりかな

みちのくの伊達の都春田かな

町すぢに葺き替りたる藁家かな

屋根替の埃かぶりて菖蒲の芽

花はまだ二分どころなり桜餅

蝌蚪の水山ふところにありにけり

岩の上に小屋掛したる躑躅かな