一葉
きのふけふ氷とけにし池水に春をうつせる青柳の糸
一葉
青柳のなびくを見れば谷川の水にも春はうかびそめけり
一葉
かげうつす柳の糸は池水にうかぶ玉藻のここちこそすれ
一葉
いにしへの春にかへれとまねくらんふりにし里の青やぎの糸
一葉
うちなびく河そひ柳あさ東風の吹きのまにまに春や知るらむ
辻まちの車の上に柳哉 子規
菅笠にはらりとかかる柳哉 子規
京人のいつはり多き柳哉 子規
金州の城門高き柳かな 子規
柵結ふて柳の中の柳かな 子規
見返れば又一ゆるぎ柳かな 漱石
門柳五本並んで枝垂れけり 漱石
柳ありて白き家鴨に枝垂たり 漱石
青柳や人出づべくとして門の内 虚子
子規
官人の驢馬に鞭うつ影もなし金州城外柳青青
子規
山陰に家はあれども人住まぬ孤村の柳緑しにけり
有耶無耶の柳近頃緑也 漱石
三條の橋の袂の絲柳しだれて長し擬寶珠の上に 子規
自転車を輪に乗る馬場の柳かな 漱石
縁日の昼も店出す柳かな 碧梧桐
伐り攻めて瘤柳なる青みけり 亞浪
晶子
柳あをき 堤にいつか 立つや我れ 水はさばかり 流とからず
居すごして箸とる家の柳かな 蛇笏
晶子
まる山のをとめも比叡の大徳も柳のいろにあさみどりして
晶子
春の里舞ぎぬほさぬ雨の日の柳は白き馬をつながむ
賑やかな町に寺ある柳かな 碧梧桐
水汲みに来ては柳の影を乱す 放哉
青柳擬宝珠の上に垂るるなり 漱石
青柳の日に緑なり句を撰む 漱石
五島戻れば港奥ある夕柳 碧梧桐
晶子
恋人ともの云ふ如く立ちながら手ずさびに引く青柳の糸
八一
わぎもこがきぬかけやなぎみまくほりいけをめぐりぬかささしながら
啄木
やはらかに柳あをめる 北上の岸辺目に見ゆ 泣けとごとくに
書樓出て日の草原のやなぎかな 蛇笏