和歌と俳句

畦塗り

畦塗りに雪一二片通りすぐ 素十

わが影に畦を塗りつけ塗りつけて 素十

御本山二十重の畦を塗りかたむ 茅舎

畦塗や笠阿呆かむり鍬はしり 泊雲

老の腰尚も曲げてぞ畦塗れる 泊雲

畦塗にぬりこめられぬ薊の葉 泊雲

畦塗りの雨にかくれてゐたりけり 月二郎

曙の早き畦塗立てりける 青畝

志賀の湖曇れる畦を塗りにける 烏頭子

畦塗るや軽雷耳にこころよく 麦南

畦塗るや鍬押当てて住戻り たかし

畦塗のことばすくなくめをとかな 三鬼

畦塗に風音とほく夕づけり 三鬼

畦塗りてあたらしき野が息づける 楸邨

畦を塗る鍬の光をかへしつつ 虚子

畦塗るや首をかしげて懇に 虚子

畦塗るや聖牛角を正しをり 普羅

浅間こす夕日に追はれ畦をぬる 普羅

塗畦に尾をつけてゐる烏かな 虚子

塗畦の土を支へて茅萱かな 虚子

塗畦の照る奥能勢となりにけり 青畝

塗畦を参道にして瑞石寺 青畝

雨雲のはしりとぶなり畦を塗る 青畝

塗畦や此所の石碑も湯殿山 青畝

畦塗をいそげいそげと奥曇る 青畝

畦塗の深田踏みぬく音ひびく 林火

隠岐富士と呼ぶしたしさや畦を塗る 青畝

畦塗に加賀白山の光りけり 青畝

ほそぼそと羽の國ぶりの畦を塗る 青畝

畦塗りの腰ふわふわと雪嶺よ 静塔