吹降りにさからふ飛燕最上川
さかのぼる卯浪を見よや最上川
ほそぼそと羽の國ぶりの畦を塗る
化粧鍬あてて水口祭りけり
よく撥ねる流の鱒や額の花
速玉の森に火こもる蛍かな
鈴の如河鹿天下や枕許
日の盛中堂の燈はとほきもの
一俵の備長炭や土用丑
化粧ひたる踊子わたり橋躍る
嵯峨日記このかた嵯峨は夜の長さ
秋の旅新羅百済に佛あり
こほろぎや百済古国磚遺す
これこそは新羅の遺塔野菊見る
雁の雨城楼は江をふさぐなり
秋風に追はれ顔なるみちをしへ
老友の欠けしと泣きぬ十三夜
鵯鳥の嘴ふかき熟柿かな
冬雲雀干拓の天さへぎらず
金の箔み空を散らすいてふかな
ふぶきゆくいてふの金の光かな
おでん屋の看板ごろの暗さかな
世は古りぬ助炭もやぶれたるままに
山始三輪明神は斧知らず
百姓の拍手固し土の春
刀匠の槌を打ちだす恵方かな