海の日のつるべ落しや親不知
北國の帰燕かぞふるほど居らず
沈没の簗あり人を寄らしめず
翡翠研ぐ石冷やかに割れにけり
木像の尊氏の目に秋日落つ
汝が蹴るを我が蹴りかへす木の実かな
省かねばならぬ品々冬支度
幹細し朴は落葉を離さざる
枯蓬伊吹の颪すままにあり
藍甕のつぶやく宵やつづれさせ
老の歯の一本強し薬食
飾海老朱竹の軸を掛けにけり
雪踏みてすとんと脛を没しけり
紅梅も今は枯木の仲間かな
流し雛珊瑚花咲く潮を恋ふ
花烏賊の墨の洪水さと流す
出雲路へ五形濃くなりつつ咲きぬ
春暁や一点燈の大伽藍
代掻の一日おけば澄みわたり
大輪のゆるめば牡丹寧からず
乗物のみちのわるさやみちをしへ
住吉の砂の音聞く茅の輪かな
渋民の歌の風鈴チンと先づ
無明より再びかへす蛍かな