秋嶺の寝釈迦の頭胸足あり
大山の裏に雲無し十三夜
王塚を訪ねてこぼす零余子かな
刈田より阿武隈川となりにけり
末枯にゆめの礎あまた見し
五劫思惟の弥陀はほろりとしぐれかな
恵心堂建てんと焚火しつつあり
みちのくを幾群となく鴨つづく
尿前のしぐれて虹を立てにけり
鳴子の湯はなはだ匂ふしぐれかな
山刀伐の深雪の中に炭を焼く
角巻にまつはり歩く秋田犬
もの蒔かぬ冬田や伽羅の御所の址
大漁旗冬至の浜をかざりけり
眠る山紺紙揉みたるごとくなる
太き尻ざぶんと鴨の降りにけり
加太の海の鹿尾菜はさほど丈なさず
加太の海の底ひの鹿尾菜花咲くと
檜原より檜原にころぶ春の月
汐干人大きな蝦蛄を拾ひけり
山陵はいやしくも花散らしめず