栂の芽や法衣さびたる浅間山
春の雪下りて噴煙北を指す
雉子鳴く浅間がくれに菖蒲の芽
浅間山巽の水に山葵畑
つばくらめ飛び交ひ霜は花咲けり
巣籠りの燕に見呆け日焼顔
巣籠れる妻の燕は巣にあふれ
巣籠りの妻より痩せて飛ぶ燕
沓掛のつばめ早起き朝菜摘み
吾妻の人と別れて蝶を追ふ
落葉松に高音鶯うしろ向き
浅間燃え春天緑なるばかり
春雲のかげを斑に浅間山
われと居て霞に堪ゆる浅間山
浅間なる幾沢かけて遅桜
山吹や昼をあざむく夜半の月
藤咲ける襞も夜明くる浅間山
畦塗るや聖牛角を正しをり
浅間こす夕日に追はれ畦をぬる
山吹の中に傾く万座径
春山の上に顔出す湯治客
春の月さしこむ家に宿とりて
尾根を越す柳絮の風の見えにけり
人に来て人に触れざる柳絮かな
ひとすぢの柳絮の流れ町を行く