和歌と俳句

前田普羅

白雲の妬心にかくす春日かな

奥山の枯葉しづまる春夕

独活堀りの下り来て時刻たづねけり

春昼や古人のごとく雲を見る

深山藤蔓うちかへし花盛り

雉子啼くや月の輪のごと高嶺雪

霧満ちて春鶯囀のやみにけり

春風に松毬飛ぶや深山径

蕨採りいこへば巌もくぼみけり

奥山の径を横ぎる蕨とり

とる人を眺むる巌の上

萌え出づるヒトリシヅカを此処彼処

松の花いつしか積る客の靴

人声の谺もなくて飛騨雪解

簗かけし岩もかくるる雪解かな

山吹にしぶきたかぶる雪解滝

汽車たつや四方の雪解に谺して

てり返へす峰々の深雪に春日落つ

一抹の雪雲はしる春夕日

熊笹に虫とぶ春の月夜かな

乗鞍のかなた春星かぎりなし

春雪や色濃き杣の雪眼鏡

春雪や神をいさめの赤き幡

雪つけて飛騨の春山南向き

行く春や旅人憩ふ栃のかげ