和歌と俳句

山吹

山吹に深山の雲のかかるなり 虚子

山吹や人に怖ぢざる渓の魚 虚子

山吹や裏戸あきたり人未だ 虚子

あるじよりかな女が見たし濃山吹 石鼎

山吹や雨にくだくる手紙屑 石鼎

学校休む子山吹に坐り尽しぬ 碧梧桐

山吹の雨や双親堂にあり 虚子

山吹剪る枝叢へ沈めとる 泊雲

山吹や滝に向つて椅子床几 泊雲

晶子
をちかたの七重の峰と対ひ咲く榛名の山の山吹の花

晶子
伊香保風岩にあるよりゆらゆらと山吹靡く駕籠の上かな

垣の山吹咲けばむしるよ行きずりに 亞浪

山吹剪るや蓑毛逆立て崖に俯し 泊雲

山吹や雲の中なる雨の峰 石鼎

山吹のましろきしんよぽんとぬく 鴻村

山吹の這うて美事や芝の上 石鼎

山吹に枕とり出す仮寝かな 青畝

山吹や風はたゞ葉を小だたみに 爽雨

鳶烏闘ひ落ちぬ濃山吹 普羅

駒鳳凰山吹曇りつづきけり 普羅

山吹や濛雨の中の奥座敷 風生

山吹の檜垣ぬけ出し一枝かな 風生

山吹のうへ明るしとははの声 鴻村

ひねもすの石屑とぶや濃山吹 草城

山吹やもの思はするよべの雨 犀星

山吹に枯枝まじる余寒かな 犀星

ふるさとや白山吹の町のうら 犀星