海見えて鶯も来ぬ谷のさま
春雷や杵築の人の気のたかき
山かけて垣結ふ寺の椿かな
禰宜の子と蜑の子遊ぶ椿かな
浜風になぐれて高き蝶々かな
浜草に踏めば踏まるる雀の子
妻あらば衣もぞ掛けん壁おぼろ
蛙ともならまし悔や草朧
陽炎や浜に地網の二ところ
そぞろ出て日永に顔をさらしけり
湖と水田と通ふ霞かな
春風や野にふるひたつ山椒の芽
春風や吹かれこぼるる巌の砂
春風に捨ててもどらん魚の腸
春風に暮れて人冷ゆ大伽藍
春雨や浜に堆きあくた塚
蜑が家の桜に居りし烏かな
磯山のさびしき花も散りにけり
花烏賊の腹ぬくためや女の手
磯際や花烏賊すゝぐ籠二つ
人影や巌に吸ひつく桜貝
大皿に二枚買ひけり桜鯛
行春の浦に烏のこだまかな
盤石をぬく灯台や夏近し