春雷やどこかの遠に啼く雲雀
椿一つ幹の向に落ちし音
春暁の今は日のさす松ばかり
春暁や次第にたかくなく雀
笑まんとすままに眠りぬ夜半の春
山霊のむささびなげて春の月
昼摘みし芽の木は見えず春の月
近きほしを明るう照らし春の月
春の月銀杏にそうてかくれがち
この朧海やまへだつおもひかな
囀やあはれなるほど喉ふくれ
囀や一羽のために揺るる桑
陽炎の上ると見れば下に哉
どろあそびねやが蝶を捕つてきた
蜂がきてちんちをさすぞどろあそび
どろあそび椿の花もうめてみる
大口をあけて震へる雀の子
口あけて我れに赤さや雀の子
雀の子死んで悲しくなりました
春雨や空一様の薄明り
青天に嶺を走らすつゝじかな
曇れども紅おとろへず花つゝじ
高嶺や日にこたへ鳴る雪解川
残雪や紅き実による日ぐれ鳥
杣が瞳にくれてしまひぬ蕗の薹