春日やゆらゆらとして鯉の鰭
枯芝にまぎれて芽ぐむ柳かな
船蔭にうつれる月や夜半の春
野の草に燃ゆる思ひや蛙の子
春猫の暮雪に逢うて失せにけり
敷石をわたりて失せぬうかれ猫
星々をよぶかに猫の恋はげし
戀猫のごうごうとして藪の月
我庵によらぬ燕を高う見し
蝶の影二つとなりし土筆かな
笠置けば笠のほとりの菫かな
春暁を目覚めし神や雲にあり
春昼の僧形杉にかくれけり
春月や蘭のほとりの小さき闇
門の花静かに白し花曇
うすうすと幾つもあげぬ石鹸玉
のどをかく肢のはやさや二月猫
春もはやうこん桜に風雨かな
うれしさの狐手を出せ曇り花
紅梅の花のすくなに恋ごころ
下萌に明さあるごと昼の月
下萌に流るゝごとし汀波
下萌や日の下深く谷の岩
綿蔽うてあるに 雛の口笑まし
映る日に王者の心水の春